自分の考えと村の人の考え 武者小路実篤

  自分の考えと村の人の考え     武者小路実篤

 自分の考えは自分の考えだ。自分の思想は自分の思想だ。
自分の主義主張は自分の主義主張だ。村の人は皆同じ考えを
もっていると思えばまちがいだ、村の人は皆同じ思想、同じ信仰、
全く同じ主義を持つと思えばまちがいだ。新しき村の生活、協力
の生活の正しいと云うことでは同じ考えをもっていることは云う
迄もないことだが、その他に就ては皆別の考えをもっている。
そして各自、自分の考えを正しいと思い、それを主張する自由を
もっている。村では信仰も、思想も自由だ。孔子が「君子は和して
同ぜず、小人は同じて和せず。」と云うのは真理だ。和するのが
大事だ。同ずる必要はない。雷同は君子の恥じる所だ。君子
同士は調和するが自分の信ずることを信ずる。好んで異をたて
ない。しかし好んで同じない。自分の確信することを確信する。

(『雑二十六』「武者小路實篤全集」第4巻、小学館、1988年。ただし、現代仮名遣いに改めた)